中国統計の怪

経済

サプライズ

中国国家統計局は17日、1~3月の国内総生産(GDP)が実質で前年同期比5・3%だったと発表しました。不動産不況の中、大方の予想(4%台)を上回り、日本のメディアも「政府目標上回る」「持ち直しの動き」などと報じました。

なぜ「サプライズ」は起きたのでしょう。朝日新聞によると、固定資産投資が4.5%増えたのが大きかったようです。内訳は民間が0.5%増にとどまる中、国有企業が7.8%と大幅に伸び、政府主導の投資が景気を下支えする構図が浮かぶといいます。

一方、不動産開発投資額は9.5%減です。同紙は「政府が掲げた今年5%前後の目標を達成できるかは予断を許さない」としています。各紙ともおおむね同様の分析です。

中国経済は重症だが、回復の兆しが見えてきた。今回の発表からは中国当局のそんなメッセージがくみ取れます。でも、本当でしょうか。

謎の〈注〉

こんな疑問をさらにかき立てる記事がありました。日経電子版子版に桃井裕理・中国総局長が書いているユースレターです。有料会員向けサイトなのでごく一部を紹介します。

それによると、発表されたデータには昨年までなかった謎の〈注〉が付いています。固定資産投資の項目を見ると「10兆42億元、前年同期比4.5%増(比較可能な範囲で計算、詳しくは注7参照)」といった具合です。そこで注7を見ると、「問題のあるプロジェクトは調査対象から外した」とあります。つまり昨年と今年はデータの調査対象が異なるのです。

不動産市場のデータも「2兆2082億元、9.5%減(比較可能な範囲で計算、詳しくは注6参照)」となっており、比較データが異なります。

桃井さんがあえて今年と昨年の固定資産投資額を直接比較したところ
10兆42億減÷10兆7282億元=-6.7%
なんと、プラスどころか「6.7%減」です。
不動産開発投資も同様の方法で計算すると、9.5%減どころか「15%減」とマイナス幅が大きく広がりました。

実際に調査対象を変えたのであれば、このような計算は無意味です。しかし、どんなデータをどんな理由で外したのか説明してもらわないと、信頼できる統計かどうか分かりません。

意図的なデータ隠しも

中国では、過去最悪となっていた若者の失業率が昨年7月分から公表停止になっています。国家統計局は「年齢層別の失業率はより正確に実態を反映する必要がある」と説明していますが、不都合なデータを意図的に隠していると言われても仕方がありません。

その一方で、中国共産党は「統計捏造は統計分野における最大の腐敗」として厳罰化を進めており、言うこととやることがバラバラです。こんなことで国の経済・財政運営や海外からの投資の呼び込みができるのか。巨大な隣国ゆえに心配でなりません。

ところで、あの「謎の注」、私が知る限り日経の本紙も含めどの新聞も触れていません。まさか中国当局への忖度ではありませんよね。

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